猫のうしろすがた

保護したのは私。コクシ撲滅作戦の際、床にゴロ寝して付きっきりでウンチ番をしたのも私。だけれども、サンは超相方派になった。

他者はあなたの期待を満たすために生きているのではない。

受けた恩義は一旦横に置いといて、自分の気持ちに素直に生きるのは、猫の良さだと思う。一旦横に置いといてるってだけで、決して忘れている訳ではないだろうと思わせてくれるところも、猫の良さだと思う。

寄生虫を克服して、下痢もおさまって、健康面での心配がなくなったサン。一ヶ月後を予定している二度目のワクチン接種を終えたら、サンを隔離部屋から解放して、ニコとサンの生活空間を一つにすることにした。

ニコとサンが対面するのか。やっと皆で共に生活できるのか。楽しみだ。なんてのほほんと悠長に考えている場合なのだろうか。

ふと、サンの気持ちを考えてみる。

自由気儘に暮らしていたら、ある日、ニンゲンに連れ去られ、狭い空間に押し込められた。まあ外にいた時より、食事面はマシか。日に二度くらいちゅ〜るが欲しいけど、このニンゲン、経済的な余裕が無さそうだから、あきらめるか。それにしてもこのニンゲン、ウンチを懸命に片付けて、やたら部屋の掃除をしているな。まあ元々綺麗好きだから、そうしてくれた方がイイんだけどね。そういえば、割と近くからネコの声が聞こえるんだよな。テリトリーに入ってきやがったら、カカト落としだな。

ふと、ニコの気持ちを考えてみる。

あっちの部屋、最近ずっと扉が閉まってて、入れなくなったよな。あっちに日当たりGOODポイントがあって、そこで昼寝すんの好きだったんだけど。まあしゃあないか。若干イラつくけど。それよりも、ここ最近あのニンゲンがあまり構ってくれなくなったのよね。夜なんて全然いないし。日に三度くらいあのニンゲンのマッサージを受けたいんだけど、どうなってんのかしら。あ、やっぱり結構イラついてるかも。そういえば、割と近くからネコの声が聞こえるんだよな。テリトリーに入ってきやがったら、十六文字キックだな。

人間に置き換えて考えてみたら、そら気持ち悪いと思う。生活している自宅の一部屋に、どうやら見知らぬ誰かがいるようだ状態な訳で、果たしてその誰かに会いたいと思うのだろうか。私だったらご遠慮願いたいし、出来れば引っ越して、心機一転、新居で新たな生活を始めたいと思う筈だと思う。

とは言っても、ニコとサンには同居してもらうしかない。仲良しこよしとまではいかなくとも、カカト落としや十六文字キックみたいな事態は避けたいので、「猫 対面」と検索窓に入力して、ありとあらゆる対策を講じた。

対面させる前に、ニコと病院へ。コクシがニコに寄生している可能性はゼロじゃないし、念の為エイズ・白血病が陰性か確かめたかったので、検査をしてもらった。お会計は8,310円。数日後、二回目のワクチン接種のため、サンと病院へ。お会計は4,050円。猫同士を対面させようとしただけで、12,360円の支払い義務が発生した。

2015年10月26日。ニコとサン、初対面の日。

ニコ、2014年10月生まれ。サン、2015年4月生まれ。半年違いとは思えない体格の差。この時ニコ1歳、サン6ヶ月。人間年齢18歳と9歳。まあそんなもんかもなとも思う。

18歳に果敢に挑む9歳の図。基本的にはこの構図が続いていた。ニコがまどろんでいると、サンがちょっかいを出す。噛みつきあったりゲムゲムしあったりする。ゲムゲムとは、町田康の本『猫のエルは』に出てくる言葉で、後ろ足を用い、相手の顔や腹をキックする猫特有の行為を表現しており、その響きが面白いなあと思って以来、マネして使っている。『猫のエルは』は、ヒグチユウコさんの絵も可愛くってお薦め。

飽きて眠たくなるまで、サンはニコへのちょっかいを繰り返す。おっとりした性格のニコと、活発なサン。一日の殆どを寝て暮らしたいニコと、遊びたいサン。目を閉じて懸命に応じるニコと、ものすごい形相で噛みつこうとするサン。共に可愛い。

ちょっかい出せるだけ出しまくって、形成不利だと判断すると、猛ダッシュで逃げるサン。取っ組み合いはニコに軍配。逃げ足はサンに軍配。我が家の18歳は、9歳より足が遅い。

ニコとサンが全然仲良くならないもんだから、この頃、相方が頻繁に「仲良くしてくれ〜」と叫びながら抱っこしていた。ニコとサンは完全に嫌がっていた。そんな単純なことで事態は解決しないだろと思いつつ、そうしたくなる気持ちは存分に理解できた。

ある日、ソファで一緒に寝ているのを発見。待ち望んでいた瞬間は、突然やってきた。噂に聞いていた“猫団子”より丸まってる感が薄いけど、お尻の辺りをくっつけて、スヤスヤと眠っている。初対面の日から、一ヶ月が経っていた。相方とニコとサンと、穏やかに暮らしていきたいと思った。

 

糸デンワ

静岡市清水区巴町9-21 丸二ビル3F
open 12:00-19:00
close Thu. Fri.

HP:https://ito-denwa.com
IG:itodenwa_shizuoka

tel:090-9572-0046
mail:info@ito-denwa.com