猫のうしろすがた

避妊手術から数日が経った。エリザベスカラーってのは厄介なもんだと身に染みる。

お腹の傷と眼の保護の為とはいえ、ニコの日課である毛繕いができない。猫は毛繕いによって心身をケアするようである、と有識者は公に発表している。このままじゃニコの心身がヤバい感じになるかもしれない。抜糸は数日後。好みの場所を毛繕えなくてニコもイライラしている様子だった。しかし山内先生からの言い付けが、と思っていたら。

いいっしょ。ちょっとぐらい大丈夫っしょ。抜糸もうすぐだし。と言って相方がエリザベスを外していた。相方の軽やかさ、羨ましい。このチャンスを逃してなるものかと、普段はおっとりしているニコが高速ペロペロ、猛スピード毛繕いを繰り出した。嬉しそうだった。私達も嬉しかった。ただしニコがお腹の傷と目に触らないよう、細心の注意を払った。山内先生には内緒だぞニコ、と思った。満足した様子を確認して、今一度エリザベスを付けさせてもらった。その日ニコはグッスリと眠った。

抜糸の日。朝飯前ですよってな感じでサクサクと抜糸を済ませる山内先生。さてさてキレイになった目を診てみましょうか、となった刹那「ん?あれ?」と言った。医者に言われるとヤな感じの言葉第一位「あれ?」が山内先生の口から飛び出した。

なんかマズい感じですかね、と聞くと「いや、あのですね、なんていうかですね、非常に申し上げにくいんですがね、思ってた感じより良くなってない感じというか、少しだけキレイになったかな位の程度というかですね、あれ、おかしいな、あれあれ、しっかり切開したから、左目くらいキレイで丸々とした可愛い目になるはずだったんですが。」と心から申し訳無さそうに、しどろもどろに答えてくれた。しきりに「スイマセン。スイマセン。」とも仰った。

そんな風に言ってくれたのがありがたかった。この先生はニコの事を一生懸命に考えてくれたんだ。私達は心からの「ありがとうございました。」を動物病院の皆さんに伝えた。

手術はしたけど、右目は相変わらず個性的なまま。涙でグズグズになっちゃうのも目ヤニが多いのも変わらなかったけど、私達はニコのその右目が大好きで。涙を拭いたり目ヤニを取ったり、この先もずっとそうしてあげられるのかと思うと、嬉しかった。

 

糸デンワ

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