2016年6月22日。企画展の幕開けを翌日に控えていたその日。お店のディスプレイを整えるのに必要なアレコレを手に入れるため、相方と近所のホームセンター(HC)へ出掛けた。買い物を済ませて駐車場に戻ると、どこからともなく「ミーミー」という子猫の鳴き声が聞こえてきた。
助けを求めている子猫は、「ニャアニャア」というより「ミーミー」と鳴く。とはいっても、字面通りの可愛い感じと違い、助けてくれ!というニュアンスを含む、「ミ」に濁点をつけた感じ。パソコンやスマホに存在しないその文字を無理矢理に書き起こすと、「ミ゛ーミ゛ー」になる。そんな声が聞こえたら周囲を隈なく観察し、助けを求めている猫を見つけたら、出来うる限りのことをしましょう。

で、キョロキョロとあたりを見回すも、その姿は確認できない。けれど鳴き声はかなり近くから聞こえる。空耳?幻聴?と思いながら耳を傾けると、鳴き声の源泉がマイカーのボンネット内であることが分かった。じぇじぇじぇ。しかも声色が2つ。ということは2匹!?
HCで各種資材を調達している数分の間に、侵入してしまったのであろう。こりゃイカンこりゃイカンということで、子猫保護作戦が始まった。

HCの店員さんは事情を理解してくれて、何時間でも駐車場に居てくださいと言ってくれた。HCに営業に来ていた一流工具メーカーの人も手を貸してくれて、チンアナゴの先っちょに高性能カメラが付いているような、何の為に存在しているのか分からない謎の機械で援護してくれた。サンちゃんの保護を手伝ってくれた、やさしくて暇そうな近所のオジさんにも来てもらった。
みんなやさしいな。世の中そんなに捨てたもんじゃないぞ。なんて思いながら保護作戦に没頭。
ボンネットから飛び出して、HC駐車場にある側溝や集水枡に逃げ込んでしまったりなど、てんやわんや、阿鼻叫喚の大騒動の末、7時間を要しなんとか保護できた。疲労困憊の中、2匹の子猫を家に連れ帰った。


身を寄せ合い寒さと不安から逃れようとする、おそらく兄弟であろう2匹の子猫。私は「大丈夫だから安心してくれ給え」とやさしく語りかけた。2014年のニコ、2015年のサンの経験があるので、保護したあとのmust doを、私は十分すぎるほど理解している。
なるはやで動物病院に連れて行く。何をおいてもこれがmust。なぜかというと、一見元気そうに見えても、外で過ごしていた子猫の体内では、何がどうなっているのか分からないから。これは、一見強面な私が実はドン引きするくらい優しい中年で、赤ん坊や動物からはけっこう慕われている、ということに良く似ている。
で、初動物病院の際に高確率で聞かれるのが、「名前は?」である。

ニコとサンで経験値を高めていたとはいえ、2匹同時に保護したのは初めて。今後のことを考えると、ニコの時、サンの時より、今回は早めに名前を決めた方が良さそうだと思った。
Imagine all the people。相方と子猫について話す際、「さっきあのコがウンチしたよ」「あのコってどっち?」「耳が大きい方」「どっちも耳が大きいんだけど、厚ぼったい方?」「厚みは分からんけど、毛色が綺麗な方だよ」「どっちも綺麗なんだけど、柄がハッキリしてる方?」「いやほら、あのシュッとしてる方だよ」「シュッじゃ分からん」
2匹共に名無しだと、こんな不毛なやり取りが続いてしまう。同居人とでもそうなんだから、動物病院のスタッフや医師が絡んでくると、全体にコミュ障な空気が蔓延してしまうのは、偏差値の低い私でも良く分かる。
さあ名前をどうしよう。兄弟なんだからそれっぽい感じにしたいけど、一郎二郎じゃ味気ないな。なんて思いながら少し考えて。

胡麻塩を真ん中で区切って、ゴマ、シオ、という名前にした。前足全体が茶色っぽい方をゴマ。前足の白が靴下のように見える方をシオと名付けた。HCで先に保護したのがゴマだったので、胡麻塩の前の二文字を付けることで、何となくお兄さん的な要素を与えたくて、こういう順番で名付けた。人間の双子も、先に取り上げられた方がお兄さんだしなー。

ゴマ。全体がシュッとしてる、端正で綺麗な柄のコです。

シオ。耳が厚ぼったい、オットリしたコです。靴下を履いている風な左前足が特徴。


保護翌日、2匹の子猫と共に動物病院に行き、ひと通りの検査をしてもらった。念の為の駆虫薬と、右目に違和感がありそうなゴマには、専用の目薬が処方されたけど、それ以外は問題のない、健康優良児達だった。良かった良かったと胸を撫で下ろしていると、先生から「で、名前は?」と聞かれた。
待ってました!やっぱそう来ますよね!と思いながら、「実はですね、ゴマとシオという名前を考えているんざますのよ、抜かりないでしょ」と伝えたところ、「じゃ、2匹とも飼うということね」と言われて、愕然とした。


既に自宅にはニコとサンがいる。そこにゴマとシオが加わるということは、2が4、つまり倍。3ならいけそうだけど、いきなり4はどうなんだ。終生を共に暮らすという覚悟が無いのに保護した自分は、真性のアホなのか。いやしかし、あの日あの時HCの駐車場にゴマシオを放っておいたら、どんな結果になってしまったか。それにしても、現今の収入と支出のバランスに、ゴマシオ関連の予算は組み込めるのか?負債が雪だるま式に増え、一家離散なんてことにならないか?
獣医の言葉で事の深刻さに気付き、煩悶煩悶懊悩懊悩の日々が幕開けた。
糸デンワ
静岡市清水区巴町9-21 丸二ビル3F
open 12:00-19:00
close Thu. Fri.
HP:https://ito-denwa.com
IG:itodenwa_shizuoka
tel:070-2183-9385
mail:info@ito-denwa.com